あいさつ

家から3町ほど離れた所に住んでいた従妹が
急に56キロ離れた都会へと引越すことになり
それまで双子のように生活していた環境が一変する
私にとっての大事件が起こりました。

お別れの日が来て、男の子ながらに頬を伝う涙をぬぐい
何か言わなくてはとドギマギする私をよそにニコッと
手渡されたものは、11歳の涙を吹っ飛ばすには十分な
破壊力がある劇薬だったのです。

引越し前に従妹が担任から渡されていたそれは
あろうことか近い未来に、つまり2学期の期末に訪れる
はずのテスト一式と学年最後のテスト一式でした。

汚れなく手を切ってしまいそうに真っ新なそれは
午後の木漏れ日に照らし出されて、汗ばんだ
私の手の中で文字が光り輝いており、これからの人生の
何かを根底から変えてしまい兼ねない代物に映りました。

私はこの2回のテストを12才の良心に抗いながら
時々100点にしつつもちゃんと「ひっかけ問題」
には引っ掛って、突然変異、上位互換の学年3位で
やり過ごすことになります。

世の中には、常に問題点や改善点が山のように山積し
波のように押し寄せてきます。

「押しつぶされ流されてしまうかどうか」は
「たどり着くべき答えにアクセスできるかどうか」で
違ってくることになるでしょう。

でも大概の“問題”は、はじめに“答案ありき”で
セットになっています。